絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

女房と便

「お前の顔を見ると、なぁんか・・出そうな気がするんよのぅ。」

昨年末から年を明けて23日間の短い入院生活。

入院中、彼に求められたものは、一日2000mlを超える尿と排便だった。

入院してからは、絶食の毎日が続いていた。飲む水の量も500ml以下と決められ・・それしか口にしていないのに、便なんか出るわけがない・・と、私は思っていた。


しかも、肝性脳症のため昏睡状態から目覚めた時には、5、6本もの点滴に繋がれ、口にするのは、口の渇きを潤すためだけの「霧吹き状の水」だけ。それだけ・・

なのに・・・・大便なんて。

口を大きく開けて、「俺のご飯」と、言って何度も求めた。

たまに、味のある物が飲みたくなるらしく、主治医に言って柚子やレモン味のお茶も、ひと口ふた口・・口にして喜んだ。

尿は出る。

毎日・・・目標に達していた。

でも、便が出ない。


しかし、ついに念願の日が来た。

朝、病室に行くと、私が来るのを心待ちにしていた。私を見るなり、

「大便が出とる。」

私にしか頼めないそうだ。

横に義母もいるし、看護師だっているのに、私が来るまで待っていた。


私を待っていた・・・


「良かったね!良かったね!」綺麗にしてあげるね。って・・・


でも点滴で腫れ上がった身体や足は重たくて、点滴の針は、いたるところにあるし・・・

「あっちゃんごめんね。一人じゃ無理だから看護師さんにも手伝ってもらうね。」

しぶしぶ・・

「おぅ」


それからもう2回ぐらいあったかな。

私にだけ言える言葉。


「お前が綺麗にしてくれ。」って。


私にだけ・・・

ありがとう!

「お前の顔を見ると、大便が出そうな気がする。」

これは、最大にして最愛の褒め言葉だったんだ!


あっちゃんがいなくなって、暫くして、もしかすると・・・手紙とか、日記とか、私宛てに書き遺した物があるのではないかと探した事があった。

しかし、未だに何一つ出てこない。


でも・・・ここにある。(心)

聞こえてきそうな気がする。

優しい声で・・・

「お前の顔を見ると、大便が出そうな気がするんよのぅ・・・。」

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