絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

霞にまぎれた本心

春の海に浮かぶ島々が薄く霞んで見える。

今日は雨・・・細い雨が降っている。


そして、今日は私達の結婚記念日。


家の中に居るのもつまらないので、また、またやって来てしまった。

行き交うフェリーや小さな釣り船。

フェリーの後ろを波しぶきが、白く太く一本の線を描く。薄ぼやけた海がみるみるうちに二つの世界に分けられていく。

こっちからあっちは、幸せの世界

こっちからそっちは、悲しみの世界だと教えてくれる。

確かに、 随分昔の今日・・・私は本当に幸せだった。目を閉じると、はっきりと聞こえてくる。姉の、涙で・・・声にならない声が・・・・

「おめでとう」と・・言っていた。

目を閉じると見えてくる。大切な大切な人達の笑顔が・・・たくさん。

幸せだった。

みんなの笑顔があったから幸せ。 いっぱい泣いた。感謝の涙・・・

新しい人生の始まりの涙だった。

大好きな人達に囲まれていたから・・

本当に幸せだった。


お母さんがいた・・・

お父さんがいた・・・

あっちゃんが横にいた・・


でも・・・今は、

二つに分かれた世界を、描かれた一本の白線の上を、私は行ったり来たりしている。

幸せの世界と悲しみの世界を・・・

今年は、独りで結婚記念日を過ごした。もともとそんなに重きを置いていなかった。あっちゃんと二人の時も料理を一品増やすとか、外食するぐらいでその日を過ごしたものだ。でも、今日、


「結婚記念日」を考えさせられた。

「共に生きていく」大切な・・・互いに感謝し合う日だったんだ。


あっちゃんは、毎年ではなかったが、プレゼントを用意してくれていた。指輪にネックレス・・・10年目の記念日には、スィートテンダイアモンドを貰った。


私は、用意したことは多分一度もなかったと思う。

駄目だなあー。わたし!

「ありがとう。そして、ごめんね。」


もう、結婚記念日は出来ない。

今日の「結婚記念日」が、

最期の記念日。

来年から、この日は、あっちゃんに心を込めて「ありがとう」を言う日にしよう。

「サンキュー記念日」誕生!だ。


いつのまにか、雨が強くなって来た。霞(霧)が一層深くなってきたように感じる。「かすみ」いい響きだ。煙のように立ち上り幻想的な「霞」の中に私はいる。「霞」に包み込まれている。回りが見えそうで見えない。まるで、雲の上・・・・あっちゃんに逢いに来たみたい。辺りを見回してももちろん居ない。なんて居心地いいんだろう。平安時代以降、春立つのを「霞」秋に立つのを「霧」と呼び分けているそうだ。私は、季節に関係なく「霞」と呼びたい。

フロントガラスまで真っ白になってきた。雨の音も心地よい。もうしばらく此処にこうしていよう。


また、一隻フェリーが通り過ぎる。

白い波が分けて出来上がる二つの世界。でも、水は、いずれ混じり合い、必ず一つの流れを作り出す。

穏やかにゆっくりとさざ波になって、一つになる。さざ波のように優しく少しだけ輝いて生きていきたい。二つの世界を上手に渡りながら無理をせず生きていく。 そんな、私を見ていてほしい。

私は、

ずっとあっちゃんと生きていく。

ただ、

ただ、私の心も深い霞の中にある。


ほら、また、霞が深くなってきた。薄ぼやけた島が益々見えなくなってきた。



判決が、出たならば・・・。

この街を、

この場所から、

二人で築き上げたものを残て・・


私は、もしかすると、最大の裏切り行為をしてしまうかもしれない。


フェリーが通る。

波しぶきをあげて。


弁護士の電話からそろそろ1週間が過ぎる。

しばらくは、闘ってみるけれど・・


愛しているけれど、

裏切ってしまうかもしれない。

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