絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

プロローグ〜命の炎

4年前の今日…


今…思えば、

あっちゃんに・・・不思議な事が起こっていた。

それはまるで…静かに始まろうとしている消え入る命の炎のプロローグのようなものだった。

あの日・・・

あっちゃんの体を綺麗にしてあげなければならない…という衝動に駆られた私は、一緒にお風呂に入り、久しぶりにあっちゃんの体を洗った。


お風呂の中は、薄い霧がかかっているようで…

今思えば…

普段…有り得ない光景だった。


まだまだ日の明るいうちに…

二人でお風呂に入り…

妻は一生懸命夫の体を洗っているのですから…。

いつもの浴槽であって…そうでもないような・・・


しかし…始まっていた。


確かに…

あっちゃんは…違っていた。


何一つ喋らず…されるがまま・・・

私が何を尋ねようとも返ってくるのは、「おぅ…」という言葉だけ。


あっちゃんの目は、そばにいる私を見ていない。

遠くを見ているように感じた。

あっちゃんの体はここにあっても心は…魂は「ここにない」ように感じた。

触れているこの体が溶けていくような…温かいはずの体さえ冷たく感じ、熱いお湯を何度もかけた。


あっちゃんの魂が脱け出そう…としていたのではないだろうか。

あの時から少しずつ少しずつ…抜け出していたのだろう。

その後、

ありがとうの言葉さえ忘れてしまったのか、それとも私には聞こえなかったのか、何も言わず身支度を整え仕事に行った。


宙を浮いているように歩いていた。


玄関を出て車に乗る時振り返り、この日初めて目が合った。


私は静かに手を振り見送った。


確か…「明日も一緒に入ろうね」と言って・・・。

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