欲張りな私は…

仕事もしたい！

孫とも一緒にいたい！

広い家に住みたい！

余裕がある生活をしたい…と思う。

彼が生きていたなら…

あっちゃは…、

きっと治療を受けながら、今もなお入退院の繰り返しであっただろう。だとすると、彼もだが、私も…気が休まる時がない生活を送っているだろう…と思う。

自由が利かない体をかかえて、仕事に急き立てられているそんな彼を見ていたら、私はきっと彼に、仕事を辞めるように提案するだろうし…彼だって辞めざるおえないだろう。

そして、私は…

自分から仕事を辞める様に言ったにもかかわらず…

心の底にある妬みが・・・

そして、

働き盛りの年齢でもある彼に、

愚痴をこぼし、冷たい言葉を浴びせかけていると思う。

大好きな彼のことを哀れに思いながらも・・・

大好きだからこそ・・許せなくて…

可哀想だから・・悔しくて…

欲張りな私が想像していた…

光の当たったキラキラした健康的な夫婦像が、彼の病気のせいで、徐々に崩れてゆくことに、いつのまにか、怒りにも似た哀しみを感じるに違いない。

私は欲ばかりだから…

思い通りにならないことに腹を立て、哀しんでいたに違いないんだ！

また８月がやってくる。

時間よ止まれ！！・・って…

いつも2人で叫んでいたなぁ。

一緒にいる時が…

一緒に遊んでいる時が…

楽しかったから…

矢沢永吉が大好きなあっちゃんは、ものまねをしながら…

「時間ヨゥ〜🎵止まれ〜」って…

このままずっと…

永遠に…続きそうだったのに！

こんな2人の時間が、まだまだ永遠に…続くと思っていたのに…。

人生は・・

神様は・・

誰をどう選ぶかは知らないけれど…

誰かのところに…突然・・起こす！

大どんでん返し！！

今となってみれば…

平凡で…よかったのに…。

何もなくても…よかった。

毎日顔を合わせることができるだけでよかったのに…。

何も望まない！

側で息をしているだけでよかったのに…。

だけど、そうは…いかなかった私の人生…。 もう・・4年…が過ぎた。

そして、またお盆がやってくる。

私は、今…時が経つことが嬉しい

歳を重ねることが嬉しい。

お婆さんになることが…嬉しい。

「時間ヨゥ〜♫進めェ〜 進め！

早き過ぎてしまえ！」って…

心の底から…そう思う。

「ばぁばぁ〜！お風呂場で遊ぶおもちゃは？」

あるわけないだろ！…と心で言い…

「すごいのあるよ！」っと笑みを返す。

おたま・ザル・ボールにペットボトルそしてナイロン袋を一つずつ大げさに見せて浴槽に入れる。

徐々にテンションが上がる。

興味津々。満面の笑み！

お風呂場は、

2人で…しばらくは、狭い小さなプール状態。

お風呂から上がったら…

ユーチューブ見放題。

なっちゃんは、自分でアンパンマンとメルちゃんの動画をうまく操作しながら見ている。

21時半…

寝かしつけを始める。

睡眠の為の音楽を小さく流す。すると、「鬼の話をして」…と言う。

なんで！鬼！！と思いながら…

桃太郎の話をする。

私の話には、決まって「あっちゃん」が出てくる。今回は桃太郎と一緒に鬼をやっつけるヒーローとして登場させた！

だから…なっちゃんが困った時は、お空を見上げて…

「おじいちゃん！助けて！」って言うといつでもやって来るからね！」

しばらく２つ敷いた敷布団の上をゴロゴロ転がっている。そのうちエンジンが切れたように…動きが止まる。すると寝息が・・・。

薄暗い灯の中で、その可愛い寝顔を見ていると、私もいつになく穏やかな気持ちになり・・・自然と安らかな眠りについた。

たった1日だったけれど、

なっちゃんの初めての一人お泊り。

大成功！

嬉しかったよ。

耳元で聞こえる寝息がとても…とても心地良かった…。