絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

哀し…寂しき鳴き声・・

いつの間にか…秋になっていたのですね。


女子寮では、来春高校を卒業する子ども達に自活支援活動を行なっている。つまり、自分の事は自分でする(自立した)生活ができるようになるために、「自活棟」と言う場所に行き、そこで半年間生活をする。その間に調理以外の殆どのことを一人でこなし、基本的生活習慣のリズムを確立するのである。

その棟へ21時の消灯時間と夜中0時に見回り行かなければならない。

宿直に当たった人の任務なのだが、私は、この仕事を始めてこの「夜の見回り」が一番嫌いだ。

真っ暗な道を通って自活棟へ行き、一、二階の事務所の戸締りの確認をし、その後、もう一度一階に下りて、長い廊下を歩き、それぞれの部屋を見回る。

夜中の0時は、小さな懐中電灯1つ手に…持って。ドキドキしながら静かにドアを開ける。寝ているのを確認してドアを閉める。



そして…女子寮に戻る。


リーン…リーン

鈴虫の鳴き声。


風も変わったな。

心地よい爽やかな風が吹く。

真っ暗な空の下…各棟の玄関先の灯りだけが暗闇に浮かぶ。


懐中電灯を右手に、空に円を描いてみる。大きく…大きく描いてみる。

「私はここよ…!。見てくれているのかなぁ。」と、独り言。

あっちゃんに!


届け!と…暗い空に。


夏の暑い時に家を飛び出してから、季節が一つ変わろうとしていた。

しかし、一向に「変わらない」私の心・・・


リーン…リーン・・

鈴虫の声が優しく響いた。

季節が変わりゆくことに・・

周りの景色が変わることに・・


無関心だった。

ただ日々の生活に、仕事だけに気持ちを向けて暮していた。そうしないと…また、哀しんでしまうから。


リーン…リーン…

鈴虫の声に

また、人恋しい秋が訪れたことを知った。


真っ暗な空の下…

3度目の秋…

私こそ…今・・・

「心が自立」できるように、自活訓練を受けているのかもしれないと思った。


鈴虫の鳴き声は、物哀しく聞こえた。

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