生きるって…哀しい。
すごい霧だった。
二台前を行く車の車体は、完全に姿を隠している。ただ、赤いヘッドライトが自分の居場所を知らせ光っていた。
辺りは白い闇・・
対向車線も、左側の街並みも、白い闇で消されていた。
注意深く運転をしていないと、いつも曲がるべき左の道へは入れそうにない。今、どの辺りを運転しているのかさえ分からない状態だった。私はゆっくりアクセルを踏んでいた。
何も見えない道をゆっくり進んでいると、自然と自分の人生と重なり合う。
最愛の夫の突然の死
孤独な生活
借金
コンビニ
相続問題
白い闇は、これらも全て隠してくれないだろうか。霧が晴れるように、全てを消し去ってくれないだろうか・・・などと考えてしまう。
こんなことになろうとは、去年の今頃は、考えもしなかったことだ。「一寸先は闇」とは、きっとこのことを言うのだろうと腹立たしくもなった。
自然と涙が溢れ出す。
白い闇の中
私が「静かに」生きている・・
白い闇の中
何も見えない。
何も見えないのが丁度いいとさえ思う。
「現実の世界なんか見たくもない!」あっちゃんを亡くしてからは、この感情が私の心の殆どを支配している。しかし、この闇にも、出口があるように、いずれ、見たくもない現実を全て見なければならない時は、必ず来るわけだ。
あっちゃんのいない人生で・・
これから・・・
生きていくには、
一人でも
安心して生きていくには、
まず、自分の家(定住でき、安心して暮らせる自分の居場所)があることだと思った。
次に仕事があることだろう。
そして、本当のことを話せる人がいることも欠かせない。
この三つが揃わなければ、多分一人では生きてゆけない・・
・・・・・・と、思った。
簡単!?
私には、そう簡単な事ではないだろう。
きっと・・春が来るまでには、裁判が終わるだろう。そうすると「あっちゃん名義」のこの家を離れなければならなくなるだろう。(二人で建て三人で生活したこの家を。)
義父母の住んでいる家があるが、そこで暮らしていけるだろうか。おそらく無理だろう。
だと、すれば・・私の居場所は?
年老いた義父母を残し・・
病気の義弟を置いて・・・
今の仕事を捨て・・
違う場所へ行けるだろうか。
そして、そこには、本当のことを話せる人が待っていてくれるだろうか?
私は、まだ、現実の見えないこの白い闇の中で静かに生きていきたいと思った。
「見たくないものが見えない世界」で生きたいと・・・
ヘッドライトだけ付けて。
(2年前の11月14日に投稿したものです。驚きました。私は、自分が思うように生きているみたいです。)
