サンタのおばさん
冬休みになって3日目はクリスマスだった。女子寮の利用者は冬休みと言えども、2名帰宅しただけで、まだ殆どが寮に残っていた。
利用者は帰宅を希望しているが、保護者にもいろいろな都合や思いがあって、年末年始と言えども、我が子を我が孫を受け入れる用意であったり、心づもりができていないのか…帰宅の申請はまだ、ほとんど入ってこなかった。
そんな日のクリスマス…。
賑やかにパーティーを開催した。歌にダンスに劇や漫才…。ケーキもマックもお菓子も準備した。
そして、その日の夜は、宿直だった私が、「サンタのおばさん」になって、皆んなが寝静まった夜中の12時ぎに一つずつ枕元にプレゼントを置いて回った。
思い出した…。
娘は、小学5年生までサンタクロースの存在を信じていた。
それもこれも…ロマンを…夢を崩さないように一芝居も二芝居も並々ならぬ努力ありの…つまり、親の苦労の賜物でもあった。
いや!親はそれを、偽りのサンタを楽しんでいたのかもしれない。あっちゃんは正にそうだった。
枕元に置いた数々のプレゼントを開く時の嬉しそうな娘の顔を見たい…ただそれだけ…のため。
サンタはお父さん…とバレてからも続いたのかどうかは定かではないが…。とにかく楽しんでいた。
私も、
この日…音がしないように一人一人の部屋のドアを開け、プレゼントを枕元に置いた。
楽しかった。
偽りのサンタだけれど、目を覚ました時、子ども達は皆、笑顔になっているだろう。と、想像した。
私の枕元にも、何か置きに来てくれないかなぁ。
あっちゃんがいいなぁ。
あっちゃんからの手紙でもいいな。
だけど…あっちゃんサンタは来なかった…。