神も…仏もない…
私の母は、仏教婦人会の会長を長年してきた。毎月のお寺の行事には欠かさず参加し、家の仏壇に手を合わせることは毎日の日課だった。そんな中で育った私達姉妹も事あるごとに仏壇の前に座り、正座して手を合わせた。
そんな、仏様に一番近いような母でさえも・・・
実父は、幼少の頃に亡くし、実母も母が30代の時に他界している。四人兄弟の兄や姉とも、長く一緒いることはできず、直ぐ上の兄に関しては、32歳の若さで、心臓発作が原因で亡くなっている。
毎日手を合わせ…お経を唱えていた母でさえも…、
母自身も…65歳になったばかりの6月蜘蛛膜下出血で亡くなった。突然のことだった。
お寺に参り、代々のお墓を守り、地域の仏事には先頭を立って参加し、毎日家の仏壇に手を合わせていた人が…
老後を楽しむこともなく…65歳で…
神も仏もない…とは、
このことを言うのではないか。
地域の人達のほとんどが参列した葬儀は、それはそれは盛大なものだった。
その中で父は泣いていた。震えていた。
あの時…
私達三姉妹が…
母を亡くした子どもである私達が…
どれほど哀しんだか…。
こんな苦しみはないと思った。
母を失った子どもが一番可哀想だと思っていた。
私達…娘の哀しみに勝るものはないと…思っていた。
でも、違っていた。
父が…
誰よりも母のそばにいた父が…
一番哀しかった…んだ・・・。
神を信じ仏様を敬っていた母が、あんなにもすんなり、何も言わずに逝ってしまうなんて…
本当に、神も仏も…ないって・・・
父は、母を亡くして7年後に、母のところへ逝った。
本当に安らかな寝顔をだった。
(今日は、父の誕生日なんです。今頃…母とあっちゃんと3人でお祝いしているでしょう。私の悪口言いながら…)
