死んでしまった家…
季節は、一つ変わっていた。
流れる道のところどころで、ピンク色の桜の花が、まだ遠慮がちに咲いているのを見た。
もう必要でないだろうスタットレスタイヤの履き替えをする為に、休日だった今日…家に帰ることにした。
一人で帰るのも…と躊躇した私は、娘となっちゃんを誘うことにした。あいにくの雨だが、約2時間のドライブは、途中のパーキングによって、美味しい物を調達したり、飲んだり話したり…なかなか楽しいものであった。
前回は、一人で帰った。
帰ると、同じ敷地内に義父母の家がある。挨拶ぐらいはしない訳にはいかない。挨拶をすれば、ちょっとした近況報告も・・となる。
仏壇に手を合わせる。
コーヒーの一杯でも頂かないことには帰れるはずもなく…余り居心地のいい時間ではない私にとっては、快くおもてなしをして下さる義父母の顔も、どこか気を遣い…しんどそうにも見えてくる。
小一時間も経てば、脚がムズムズ、心はソワソワ…
「そろそろ…・・・」と、いうことになる。
今回は、娘となっちゃんがいた。
私は、家族三人で暮らした家に入った。時々義母が有難いことに掃除をしてくれている。しかし、生活者がいないこの家は、もう…新しい空気の匂いがしなかった。
あっちゃんがいなくなって、一人でこの家に住んでいる時、
「ただいま…」っと言って泣いた。
「行ってきます…」っと言って胸が痛んだ。
だけど…今日・・・
「ただいま…」っと言っても涙が出なかった。
2人の思い出が詰まったこの家に暖かさは、すっかりなくなっていた。