私の最期の居場所は、自分で決める。
雨の中のお墓参りだった。
傘を差して行った。
桜が咲いている境内に入った時、足を止めて少し…見上げた。
初めて…あっちゃんの住む街へ来たのは、確か春休みだった…。あの時も桜が咲いていたような気もする。
まだ、結婚はしていない。
あっちゃんに、この場所に連れて来られ、ここには、俺の先祖が眠っていると言う話を聞いた。
そして、お墓の前で、
2人で手を合わせた。
ひと言も「一緒にここに入ろう…」なんて言われたことはないけれど…。たぶんあの時、きっと…2人の最期の居場所は「ここ」がなるのだろう・・と思っていたのかもしれない。
手を合わせ、一度も会ったことのないご先祖様に、小さな声で、
「よろしくお願いします…」なんて、言ったのだろう…か…。
雨の中、線香に火をつけた。昨日まであんなに暖かく、桜の花びらが喜びの声を上げ、これから一気に開こうとしていたのに…
今日は、冷たい雨が、あっちゃんの上にも容赦なく降っていた。
そんな中…
直ぐに消えてしまいそうな気もしたが、あっちゃんにあげられるものは、今はこれしかないから…と、線香に火をつけた。
そして、差して来た透明な少し大きめ傘を、お墓にかざした。
火が消えないようにと。
聴いてくれていると信じ近況報告をした。傘を叩く雨音が心地よく、しばらく線香を見ながら話していた。
2人を永遠に引き離す「死」が、こんなにも早く来るなんて思っていなかったから・・
お互いの最期の居場所も確認しないまま逝ってしまった。
「俺のご先祖様が眠っている場所!」
あっちゃん…私は…
そこへは…行かない・・・
