ゆらり…飛んで、根付く場所。
新学期が始まる前日…
その日、さくら寮の利用者だけで花見をする計画をしていた。お昼ご飯は、みんなでマック!
近くの公園で食べる。
たったそれだけ…。
だけど、
通学の数分間。
週に一度のおやつ買い。
家族との外出や学校での現場実習。
それ以外は、何か特別な事でもない限り公道を歩くことはない。ましてや公園に行って、お昼ご飯なんて…。
園外に出ない、自由に出られない利用者にとっては、いくら敷地内に沢山の桜があるとはいえ、近くの公園に行く事だけでも、開放的で嬉しいものだろう。
中高生の彼女らは、少しはにかみながらハンバーガーをベンチに座って美味しそうに食べた。
公園には、昨日の雨と風で散ってしまったさくらの木が、それでも十分な存在感で、暖かい風と一緒に揺れていた。
なんてのんびりした時間だろう。
今年度高3になる利用者が静かに言った。
気持ちはいいけれど、いつもの場所の方が落ち着いて食べられる。早く寮に帰りたい…なって。
例え不便であっても、
例え外出がままならなくても、
例え規則が多くて束縛感があっても
慣れた場所には…
見慣れた所には…
自分の居場所が見える。
挑戦することも大事だけれど、自分の落ち着く場所で、小さくとも花を咲かせることも大切。
彼女の言葉で、
人は、根付いたところで…
自分なりの花を咲かせることに、
また、気付かされた。
