あっちゃんの手と手
6両編成の列車が行き来する。その小さなふみきりの向こうになっちゃんの通う保育園がある。
娘と2人で歩いて迎えに行った。
昨日までの雨が辺りを洗ってくれたらしく道端の草木が生き生きとして見える。
カンカンカーン・・・
時折鳴り響く踏切の音が心地いい。
そう言えば…
小さかった娘の手を引いて毎日保育所に連れて行ってくれたのはあっちゃんだった。保育所の近くまで車で乗り付け、どのくらいだろう。たった2、300m。毎日手を繋いで歩いた。朝、保育所に行くことをぐずった時も、雨の日も、カンカン照りの暑い日も…毎日…5年と6ヶ月
小さな…か弱い手を包んで歩いた。
娘はきっと、その優しくて、大きな手の温もりを覚えているだろう。
あっちゃんはきっと、地球に存在するあらゆる危険な物から、娘を守ろうと、小さな手を…けして離さないように歩いていただろう。
その手を…
こんなに早く手離すことになるとは・・・思わなかった。
あ!なっちゃんと娘が保育園から出て来た。
「あ!ばぁば」…
走って駆け寄る。
両手を広げて抱き抱え、小さな小さな手を優しくしっかり握って歩き出す。
この手を…あっちゃんのところへ逝くその日まで包んで生きよう。
本当に…かわいい 手!
