消えてしまった過去
ドアを開けた瞬間…
もう…随分前の空気の匂いがした。
昨日、久しぶりに…
お墓参りをするために帰宅した。
お義母さんが、おでんと酢物を作って待っていてくれていた。
娘家族と一緒に帰ったので、もっぱら話題は2歳になるなっちゃんの話で…
別に話すことのない私にとっては丁度よかった。なっちゃんがいるお陰で、その場にいられるような…持て余す時間を有意義に過ごせるような…そんな気がした。
私は、一人…義父母の家から外に出て、同じ敷地内にある「元あっちゃんと私の家」に入った。
玄関のドアを開けると…
生暖かい空気が流れた。
誰も住んでいない、活力のない重たい空気…
行き場がなくて、どんよりとした古臭い空気…
かつては…ここで話し、笑い、たまには喧嘩もし(一方的に私が言うだけだったけれど…)涙も流した。
今を…
未来を作るために「今」を精一杯生きてきたこの場所が…
1年で…
心を盗られた私の様に…
何もかも消えてなくなってしまったかの様に…。
ここに…
この場所に・・・
本当にあっちゃんがいたのか…
そう思ってしまうほど…
生きていた匂いが…
思い出という名の幸せの残像が…
なかった…。
