人は…知らずまに、また…繰り返す。
(私は主人を亡くした年の春…早くも今と同じ心境だった。
桜が散って…風に乗って散らばるように…私も今…最期の居場所を探している。)
やっぱり来た。
この場所に。
砂浜に面して植えてある桜の木・・・
地面に落ちるのをためらっているのか少しだけ残っている桜の花が、吹いてくる潮風に抵抗してしがみついている。
枝は、そんな花びらの細やかな願いも知らず、ただ悠然と風の流れに逆らわず自分の体をしならせている。
力尽きた花びらは、砂浜から巻き上がる砂に混じって舞い上がる。
そして、地面に落ちる。
ここで過ごした28年の月日。
娘は、吹いてきた希望ある春風に乗って、自分の居場所 へと飛んでいった。
私は、枝は折れてしまっているのに、まだ必死で掴み離れようとしていない諦めの悪い「さくら」だ。
吹いてくる風にも抵抗し、舞い上がる砂は手で覆い身を隠す。
ここで今まで通り生きていける訳がないのに。
風の流れに逆らわず、飛んでみようかなあー。
ぎゅっと掴んでいないで、そっと手放そうなかあー。
そうしたら、
心が軽くなれるのだろうか。
そうしたら、笑えるのだろうか。
あっちゃんは寂しくないだろうか。
私が手を放したら・・・・
今、また、私の目の前を花びらが飛んでいった。
歌っているように見えた。
