死別と生きる⑩ 残酷な記憶を胸に…
「えっ、また!入院!!」
私は怒っていた。
そして呆れてもいた。
主人は10回以上、入退院を繰り返した。
一ヵ月程度入院したら、ケロッとした顔でひと回り小さくなって帰って来ては、お決まりの禁酒生活をしばらく続けた。
私は、
もう…
入院中に付き添うことはもちろん見舞いに行くこともなくなっていた。ただ必要な物をその時に持って行くだけ。ホテルにでも泊まって気分転換して帰ってくる・・・そう…
そんな感じになってしまっていた…
最期の入院の時もそうだ。
一ヵ月も…すれば・・・
帰って来る。
元気になって…
笑って・・・。
それが…
私の最大の誤算だった…。
確かに…
今までの入院とは随分違っていた。
吐血…
吐血しての緊急入院だった。
今思い出してもゾッとするあの恐怖の時間は忘れることができない。
主人は、吐血した後も、病院へと急ぎ運転している私に向かって、
「家に帰る!
帰って寝とったら治るから!!」と繰り返した。車から降りようとしてまで。
私の青ざめた顔なんて…
今、目にした光景を信じられず…
怖くて、怖くて悲しくて、恐怖と寒さで震えていることなんて知らずに…。
何事もなかったかの様に…
救急車の中でも、
病院へ着いた時でも、
すごくすごく…すごく元気だった。
さっきあったこと・・
見間違いだった⁉︎
本当にあれは血だった⁉︎
だから…
腹が立ったんだ!
今!入院?って…
また!入院⁉︎って…。
すごくすごく腹が立っていた。
何度も繰り返すことに…
何度繰り返しても…
喉元過ぎれば…で・・・
変わらないことに…!!
平気だ!大丈夫だ!って…
腹が立って…
腹が立って…!
そして・・・
すごく怖くて…悲しくて・・・
(時は12月29日。
嫁いだ娘が旦那さんと一緒に年末年始を過ごそうと、初めて実家に帰って来る日を前に・・・)
まさか!
最期の入院となって…
もう2度と帰ってこないなんて…
考えもしなかったから…。
すごくすごく腹が立った。
