絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

白衣恐怖症

体が疲れ切っている…正月早々そう感じていた。

 

 2ヶ月に一度、薬を貰うために病院へ通わなければならないのだが、年末年始で病院は休みだったし、もともと病院が大嫌いで、出来ることなら行きたくない私としては、『面倒くさいなぁ』という思いが先に立ち、常備薬として毎日服用している薬を10日以上飲まずにいた。

 体は、別に変わったことはなく調子も悪くない!飲まないなら飲まないでもいいかも・・なんて思ってはみたが、20年以上続けていることをスパッと止める勇気もなく、年が明けて病院へ行った。


 私は、いわゆる・・・病院へ行き白衣の医者を目の前にすると異常に血圧が上がる「白衣恐怖症」で、その日もやっぱり180の94だった。先生はいつものことで笑っているが、私は病院へ行くのは「死ぬより嫌なことなんだ」と言っても理解してくれるはずもなく…


「義香さん!不整脈があります。

 きちんと薬を飲まないと脳梗塞になりますよ!10年20年先のこと言ってるのではありませんよ。直ぐにでも起きることです!」


 「・・・・」


「脳梗塞になると、直ぐに死ねますか?」


「義香さんはポックリ死にたいと思っているようですが、脳梗塞ではポックリ死ねませんよ!脳梗塞になってからが大変なんですよ!」


「二週間後に来て下さい!24時間心電図の検査をしましょう!」

 

 大嫌いな病院通い…

 ポックリ死ねるためには仕方ありませんか?

初泣き…

 主人のいない5回目の正月は、元旦は仕事だったが、二日は家に帰った。

 三日も仕事だったので迷ったが、

 「お母さん、一緒に帰ろっ!お墓参りしよっ!」って…娘が言うので、一緒に帰ることにした。

 

 高速走って2時間。

 首を長くして待っていてくれた。

 義母が作る御節料理…は、本当に美味しかった。

 お雑煮…

 お刺身の盛り合わせ…

 毎年恒例の元旦の朝を思い出した。



 あっちゃんがいつも座っていた席・・・



 娘婿が座っている。

 

 娘は赤ちゃんの頃からあっちゃんの隣が定位置だった。


 私は…と言えば、義母の横。

 真っ正面に義父がいる。


 まずは恒例のお年玉交換…

 義父とあっちゃん担当だった…。


 それが終わると乾杯…

 そして会食…


 しかし…

 チョロチョロ歩いていたミニチュアダックスのリリーも…もう…いない。

 あっちゃんは、もう…5年になる。

 随分変わってしまったお正月…。

 

 あっちゃんが居たはずのその席を見て…

 やっぱり・・・初泣き…となった。

追憶① 大馬鹿者!

 まさか…

   死ぬなんて思わないから…


 娘の挙式から約1ヶ月後…

 二人で帰省すると聞いて嬉しくて。

 

 12月27日から冬休みに入っている私は、普段しない掃除を念入りにすることにした。次の日も次の日までかかった。

 コンビニの仕事は全く手伝わずに…。

 心ウキウキ…。


 娘婿が家に来るのは、

 大学生の時に遊びに一度と、結婚の許可をもらう時、結納…そして今回家族になって初めて・・・。


 隅々まで掃除した。

 布団も新品を用意した。

 年越し蕎麦も地域で評判の良い店で予約した。


 後は、二人が来るのを…


 待つだけだった。

 

 賑やかに…結婚式のDVDを見ながら食べたり飲んだり…幸せな大晦日を四人で過ごすはずだった。


 まさか!死ぬなんて思わないから…


 私は二人が帰って来ることに頭がいっぱいで…ウキウキで・・・

 あっちゃんの体調が随分悪くなっている事も気づいていたような…いなかったような・・・。


 まさか…死んでしまうなんて…思わなかった。


 あっちゃんが死んでしまってから聞いたんだ…。


 注文を受けたクリスマスケーキを、あっちゃんが一つ一つ…配達したんだって…。

 一人一人にお礼を言いながら…

毎年予約してくれるお客様のところに…。

 帰り際、歩いている後ろ姿が、まるで足を引きずっているかのように見え痛々しかったと。

 

 その時、あっちゃんの身体は、もう既に悲鳴すら出ることもなく、何かの力に引っ張られている様な不思議な力に動かされていたのだと思う。

 感謝の気持ちを伝えたくて、最期のクリスマスケーキを手渡ししたのだ。


 知っていたのかなぁ。

 最期のクリスマスケーキ…

 

 だから、せっかく大掃除したのに…

 大晦日は緊急入院した病院の病室。


 そして、あっちゃんは、

 娘婿とたったの一度も一緒に大好きなお酒で乾杯することもなく…

 新しい年を一緒に家で祝うことも一度もなく…逝ってしまった。

 

 馬鹿だよ…本当に!


 大馬鹿!


 私は…

 あれから・・・

 盆も正月もクリスマスも…何もかもが嫌になっていたんだ。