絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

姿はなくても…

 あの日から…

 5歳も歳をとってしまった。

 まだまだ若いつもりだけど…

 

 あの日から…

 

 普通が普通で…なくなって、

 幸せは…

 団欒は…

 どこかへいっちゃって、


 主人のいない家は息苦しくて…


 主人のいない世界は私の存在価値もなくなったようで…

 

 それでも…生きていくしかなくて…

 

 生きていれば、少しは希望も生まれてきたような気もするけれど…


 この5年間で10歳は年老いてしまった…そう思う。

 日々老化…していくような…。


 主人が生きていたら…って。

 しかし、

 主人が生きていたとしても…

 私は私の思うように…一人で闘っているに違いないのに…。

 

 今の私は、

 姿のない主人に、

 助けてくれることなんて…

 肩を抱いて勇気づけてくれることも…

 涙を拭いてくることも…

 

 ないのに…

 

 頼りたいんだよねぇ。

追憶②あの世からの電話

 毎日毎日…夜9時になると電話が鳴った。

 携帯電話なんてなかったから・・

 9時になると…

 家の固定電話がそれはそれは大きな音で鳴る。


 リーンリーン!リーンリーン!


 電話は2台あるものの…

 一本の回線だから、両方の電話が鳴る。

 

 電話の一台は私の部屋に置いた。


 母は、毎日のことだから…

 毎日ほとんど同じ時刻だから…

 その電話が鳴っても受話機を取ることはしなかった。


 毎日毎日…1時間以上…話した。

 

 どんな話をしていたのだろう…。

 仕事の話…?

 それぞれの自慢話…?

 

 話の内容は覚えていない。多分どうでもいいことを話していたんだと思う。


 会いたい…って思いながら…

 300キロ離れた場所にいる彼と私…

 細い電話線の中に入ることができたら…なんて・・思ったこともきっとあったと思う。

 

 彼はいつも、お酒を飲みながら話していた。

 私は大概お風呂上がりだった。

 話の内容は思い出さないが、声を抑えて笑っている私が…彼の声がする受話器を大切そうに抱えている私が…はっきりと思い出される。

 

 幸せだった!


 どんなに離れていても…


 声が聞こえて…

 声のトーンから気持ちも伝わって…

 笑い声が…

 咳払いが…


 はっきり聞こえた。


 あれから5年…

 夢の中の彼は何か喋っただろうか?声を聞いていないような気がする。


 そこら中いろいろな電波が行き交っている今!

 あの世からの声をキャッチできる電話はできないものだろうか…なんて考えてしまう。


 あぁ〜あ!声が聞きたい!

三日月

夜見る月と違って…


三日月が…


朝、空にあった。

真っ暗な空に。

星もない空にくっきりとあった。

それはまるで黒い色画用紙を切り取って作った切り絵のようにも見えた。


墨汁の中に金色の折り紙を落とし浮かべたようにも・・・


私は足を止め、

その三日月を下から仰いだ。

冷たい空気が、三日月をより鮮明に、そして美しくしていた。


そんな美しく三日月を見てたら…

哀しくなった。


私は何をやってんだろう…。


こんなところで…

こんな朝っぱらから…


月は夜に見るものではないのか!


月を朝見るなんて…って…その現実に朝っぱら涙が出た。


今度から朝は下を向いて歩こうと思った。


月は…やっぱり夜だ!