煌びやかなクリスマスの夜とは…随分かけ離れた場所に二人はいた。
しかも…これが・・・
本当に…
本当に…
主人にとって・・・
私達二人にとって・・・
最期のクリスマスになったのだから。(たまったもんじゃないよ…)
今でも不思議に思うことがある。
並んで座っている主人と私は、ほとんど会話をしなかったのだ。
いつもなら…
いつもの主人なら…
釣り針の刺さった私の指を見て、冗談の一つや二つはサラリと言って退けるほどの人なのに…。
ただ黙って座っていた…。
その視線は・・
ずっと遠くにあったように思う。
きっと…
何かを…感じていたのだろう…。
もしかするとその時には・・既に…
名前を呼ばれ…二人で処置室に入った。
「釣り針が刺さってしまいました」私は言った。
主人は、私の肩に手を置き体を動かさないよう配慮した。しかし直ぐに医師が、
「ご主人さんは外でお待ち下さい」と言った為処置室を後にすることになる。
静かに出て行く主人の後ろ姿を振り返り見たような気がする。その後ろ姿が、随分小さく見えたのだ。
力無くした人の様に・・見えた。
処置を終え、主人は私を家に送ってから仕事に戻った。
私はその日、
一人でクリスマスを過ごした。
結果…
最期のクリスマスは…こうして終わってしまう訳だ。
神も仏もありゃしない!
しかし、
病気や怪我をしたことがない私にとって、主人に付き添われて病院へ行くのは、その日が、最初で最期であった…。
もしかして…これが・・・
プレゼント!?
まさか!
最低!!!
そして、
その4日後緊急入院。
それから23日間の闘病生活が始まることになる。
結局、
クリスマスの日から始まった…悲劇は、最悪にして最大な哀しみを私に与え幕を閉じることになる。
だから、
あの年から…
私はクリスマスが嫌いだ。