人影とあなたの声
明かりが点いているのは、いつも一つの部屋だけ…だった。
仕事が終わって誰もいない家に帰り着くのはいつも3、4時間後には「明日」になる時間だった。
出来合いの物を買って食べて、お風呂に入って、いつも座るソファーに座っていると、いつの間にか眠ってた。
付けっぱなしになっている電気やテレビを消して寝室に行き、
そこでまたテレビを付けた。
興味がある番組がある訳でもないが…。
何の音も誰の声も息遣いも聞こえない家の中…で、
そのテレビの音が聞こえることが、「人がいる世界で生きている」証拠になっていた。そして、それは子守り唄のように深い眠りに誘う私の眠り薬でもあった。
そうして…毎日毎日
「音」を聴きながら眠った。
シーンと静まりかえった暗い夜が怖かった訳ではない。が、
その頃は「独り」を実感するのが哀しくて辛かったのかもしれない。
それからずっと…
今でも、
テレビか音楽か…
何かしらの「音」が聞こえる中で 眠っている。
もう…
主人が「ここ」にいなくても…
「独り」でも…
辛くて泣くことはないし、
これが私の人生なのだと諦めもついているのに。
ただ…
あっちの部屋も…
こっちの部屋も…
電気が灯る時間になると…
すごく!!
声が聞きたくなる…
「声」が聞きたくなるのだ!
