45万 (1話)
ピンポーン
宅急便…!?
今日、長崎のハウステンボスへ行っている姉から、娘あてにミッヒィーの小包が届くようになっているらしく、小走りに玄関へ向かった。
すると…
「お母さんにも聞いて欲しいんだって…」…と・・・
居間にいた私を呼びに来た。
お隣のご夫婦だ。
玄関に二人並んで立っている。
神妙な面持ち…。
ご主人の方は、小太りで短い頭にパーマをかけていて強面・・。奥様の方は、化粧気もなく痩せていて普通の主婦って感じ。
顔を合わせれば、頭を下げ親しげに挨拶をする…見かけと違って愛想があり話しやすいご夫婦だ。しかし、仕事をしている様子はうかがえず・・二人でよく出かけている姿を見かける。
仕事に行っている感じではなく、パチプロ夫婦?…なんて…娘と噂していた。
二人には、高校生くらいの女の子が一人いる。時々車で送っている。不定期な時間帯なので、通信制の高等学校にでも通っているのではないかと思われる。
その夫婦が…
今日は改まって…しかも玄関の中に入り…
姿勢を正し…話し出した。
「娘をご存知だと思いますが、今日中に学校の学費を支払わなければ、学校を辞めなければなりません。」
それが何?
「費用はかき集めることができたのですが・・・そのお金が手元に入るのが8日になるんです。」
じゃあ!学校に待って貰えばいいじゃない!学校よ!教育現場よ!
取り立て屋じゃないんだから…そのくらい待つでしょ!
「しかし、学校は「今日中」に払わないと辞めてもらうと言っています。今まで220万ぐらい払っています。それが、水の泡になってしまうのですよ!」
それで…なんと!
「お金を貸してくれないか」と…お願いに来たのだ。しかも今日の15時までに。
45万円…!
「必ず一週間後に返すし…念書も書きます。隣に住んでいるので逃げも隠れもしない。信じて下さい…」と・・。
断るべき…だとは分かっている。
しかし…NOが言えない。私…。
つい…
つい…!
出てきたのは…
「主人に相談します。」だった。
