笑いに変える場所
私の実家は、別名「海のアルプス」と言われる…それはそれは美しい橋がある所なんです。私の家からその橋は見えました。目の前にありますから。その橋の架かる海は、今も昔もエメラルドグリーンで、子どもの頃の私の海水浴場でもありました。
生前…母は、その橋を散歩コースにし友人と歩いていたそうです。
生前…父は、会社を退職し、船を買いその橋を毎日眺めては、沖へ魚を捕りに行っていました。
多分橋が架かったのは、今から15年ぐらい前だと思います。私は、実家に帰る度に橋を渡っていました。ドライブ・海鮮料理を食べに・・家から眺めても綺麗ですが、実は、その橋を渡ったある所に私達三姉妹の秘密の隠れ場所があるのです。
「雄叫び所」
腹から…腹の底から声を出すのです。
「おかあさーん」…って・・
何度も何度も叫ぶのです。
何故か、その場所から叫ぶと「その声」が届いているような気がします。
姉妹で…娘たち連れて…泣きながら
伝えたいこと、お礼、お願い…なんでも声が枯れるまで叫びました。
そして泣きました…
でも面白い事に、叫んだ後はみんなで大笑い…
どうしてでしょう。
笑いが止まらなくなるのです。
涙が笑いに…変わるのです。
そこへ…
その場所へ…
行きたくて…
行きたくて…仕方ないのに・・
行けない。
それは、きっと、
「ひとり」だから…
涙は笑いに変わらない。
・・そう…思うからです。
それは…
「夫の死」は、ひとりの…
私だけの哀しみだから…
