これが私の生きる道
大木がなぎ倒され、行く手を阻まれた。
私の後ろにみるみる車の列ができた。迂回路を探した。
それは、苗が綺麗に並んで植え付けられている田んぼの横を、車一台がやっと通ることができる細い道だった。山の方へと続いていた。バックミラーを見ると、案の定…後から後から車が連なっていた。
暫く車を走らせて行くとT字路に突き当たった。この先は…多分左側だろうと目星をつけ、その場に止まった。
動かない車が列をなしていたから。
30代の男性が車から降り、三方向の車の流れの誘導を始めた。
久しぶりに…心が動いた。
譲り合いながら車をゆっくりゆっくり走らせる。我れ先に行こうとする者などいない。様子を伺って、遠慮がちに皆んな進んでいる。
スムーズに進めるようになったのは、道に迷い込んで1時間が過ぎた頃だった。
一本の大木に、惑わされながらも…人は、自分の進むべき道を探る。進み行く道には、人との関わりがある。人の流れを…人の心の動きを伺いながら…進む。
人との関わりが煩わしくて…
ほぼ…4ヶ月…家にこもった。
人から私の現状を聞かれるのも嫌だったが、人も…私には・・・
話し掛けたくなかっただろう。誰だって…この世の終わりのような顔をしている人とは…関わりたくないものだ。
しかし…家路を探して車を走らせたように…私は…生きてゆかなければならない。自分の道を探さなけれならない。
二つに一つ…
働くしかない。
生きるためにはお金が要る。
私の目の前にある幾つもの倒れた大木…。今回は、この大木を避けて、違う道を探し進んだけれども…
これからの私は…
今も、これからも続く「あっちゃんのいない私の道」を「一本のこの道」を進まなければならない。
迂回路なんてない…
避けて通ることはできないのだ。
目の前にある大木を、何とか自分の手で、切って、押しのけて…進まなければならない。
家に帰って…早速電話をした。
「今…人を必要としている職場はありませんか?」
