24時間の余命宣告
あっちゃんと私は、よく手を繋いで歩いた。
娘が小さかった時も…娘を真ん中にして、ぶうらん!ぶうらん!ブランコするより・・
私のどちらかの手は、あっちゃんの手を握っていた。
2年前の今日…
「24時間の命です。」と、余命宣告を受けた。主治医の話を聞いた後…
そんなことを悟られないように、病室に入ってすぐにしたことは、腫れ上がったあっちゃんの手を撫ぜながら…
「おしっこいっぱい出して、退院しようね。」
と、言った。
肝硬変の悪化で、腹水も溜まり身体全体が膨れていたから、手も大きくて指も以前の2倍になり…それでもあっちゃんの温かい手を握ることで安心した。
しかし、今考えても…
普通余命宣告って、
「あと半年です。」ぐらいの…
普通…「月単位」でしょう。
あっちゃんは、「時間単位」だった。心の準備は疎か…
全く意味が分からず…
貴重な時間なのに…
ふわふわ雲の上にでもいるかのように…何もせず過ごした。
愛する人が…
今、目の前で話をしている人が…
いつもとは変わらない
あっちゃんが…
「今日…死んでしまう。」
ここで…24時間以内に・・・
そんなことありえるはずがない。
手を繋いでいないと、悪魔がやって来て、連れ去ってしまうようで…
毎年見ていた、ダウンタウンの「笑ってはいけない」を見ながら…
いや!テレビは付いていたけれど私は全く見ていなかった。
いつ…訪れるか分からない「あっちゃんの死」を、まるで人ごとのような感覚で…不安で不思議な時間を過ごしていたように思う。
姉と妹が九州から出てきてくれたので、私はなんとか正気を保っていた。
個室ではあったが、3人もそこで寝る訳にはいかないし、姉も妹も長旅の挙句仕事帰りであったこともあり、2人には近くのホテルに泊まってもらった。
テレビは、もう・・新しい年を迎えていた。
私は、この異様な空間の中で、信じられないことが起ころうとしているにも関わらず…
わりと落ち着いていた。
寝息を立てているそばで、私はずっと手を握り、あっちゃんを見ていた。
誰にも渡したくなかったから…。
あっちゃんの手を・・・
