あっちゃんを探して…
そうそう…冬の海は、夏の海より輝いていたのを忘れていた。
海を…海だけを眺めるためにこの場所に来るようになったのも…こんな寒い日だったような気がする。あっちゃんがいなくなって休日に何もすることがなくなった。
家の中にいるよりも…気が晴れるのではないかと思い車を走らせ、辿り着いた所は、娘が小さかった時によく行っていた海だった。公園もあり…そこで遊んだ。春には桜が満開になり、その桜の樹の下でお弁当も食べた。
そう言えば、娘が嫁ぐ年の3月、娘の友達が我が家に遊びに来た。2、3泊して帰る時、車で大阪まで送ることにした。
その時、私は朝早く起きて、四人分のお弁当を作った。
四人…分…
娘と友達と私…そして、あっちゃん…。春とは言えまだ肌寒い日だった。お弁当を食べる場所は決めていた。まだ桜が開花するには少し早かったが、車を海に面して停めた。
もちろんこの海。
この海でお弁当。
お昼ご飯だ。
四人で食べた…。たまに、外に出て冷たい風を感じながら…
この海で・・・。海を見ながら…
まだ硬い桜の蕾を見ながら…
私達四人は、
桜の花以上に笑顔満開で・・
この海であっちゃんとお弁当を食べた。
まさか…あの日が、
ここへ来るのも…
お弁当を食べるのも…
一緒に桜の蕾を見るのも…最期になるなんて・・・思わなかった…。
私は…あっちゃんの生まれ育った所で今でも暮らしている。だから…今だによく2人で来た路地に入ったり、一緒に行ったお店の前を通ったりすると、もしかしたら…と、あっちゃんを探す。道に迷って帰れないのではないか。私に怒られそうで帰るに帰れない状況なのではないかと…
まだまだ…この街のどこかに居そうで…。
でも…あれから2年…あっちゃんの姿を…似た姿にさえ出逢えたことがない。
まだまだ桜も先…の先…。
今日から毎週ここに来よう。
キラキラ輝いている海を見てるだけでも…あっちゃんを感じられるから。
