思いやりと言う名の薬
「倒れていたのかと思いましたよ。」かかりつけの医師が開口一番そう言った。
バセドウ病とコレステロール(値が高い)の薬が、もう一ヶ月近く切れていた。
薬を飲んだからって…治る訳ではない…。もう…かれこれ20年近くになるのに、薬の量は増える一方で減ることはない。つまり効いていない訳だ。
薬のお陰で病状が抑えられているのは分かってはいるが・・・。
一ヶ月間飲んでいなくても、いたって元気。不快な症状もなく…全く平気なのも本当で・・。
「薬を飲んだところで…
長生きしたところで…どうなるものだろ…。」なんて…投げやりな気持ちにもなっていた。
検査をして、薬をもらって…そんな普通のことが…今の私は…、
「生きる」ことについて、少々消極的になっている私にとっては・・
「面倒くさい…」そっちの気持ちの方が上回って…。
ただ…「面倒くさい…」って…病院へ行かなかった。
そう言えば、あっちゃんも…薬を飲んでいたなぁ。
何の薬を飲んでいるのか…聞きもしなかった。
しっかり聞いていたら、症状を少しは理解し危機意識も高まり…あっちゃんは死ななかったのだろうか。
「薬を飲まんといけんから…」って、夜中遅く帰って来たにもの関わらず、朝起きて食事をしていた。
定期的に通院していたし薬も服用していた。
「生きたい」と願ったはずだ。
「治したい」と祈ったはずだ。
だけと…遺品を整理する中・・
真っ新な薬が、
飲まなかったのか…飲み忘れたのか押入れから沢山… 出てきた。
慰めにしかならなかった…・・薬…
本当に必要な薬は、
「思いやり」だった…。
