絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

追憶②あの世からの電話

 毎日毎日…夜9時になると電話が鳴った。

 携帯電話なんてなかったから・・

 9時になると…

 家の固定電話がそれはそれは大きな音で鳴る。


 リーンリーン!リーンリーン!


 電話は2台あるものの…

 一本の回線だから、両方の電話が鳴る。

 

 電話の一台は私の部屋に置いた。


 母は、毎日のことだから…

 毎日ほとんど同じ時刻だから…

 その電話が鳴っても受話機を取ることはしなかった。


 毎日毎日…1時間以上…話した。

 

 どんな話をしていたのだろう…。

 仕事の話…?

 それぞれの自慢話…?

 

 話の内容は覚えていない。多分どうでもいいことを話していたんだと思う。


 会いたい…って思いながら…

 300キロ離れた場所にいる彼と私…

 細い電話線の中に入ることができたら…なんて・・思ったこともきっとあったと思う。

 

 彼はいつも、お酒を飲みながら話していた。

 私は大概お風呂上がりだった。

 話の内容は思い出さないが、声を抑えて笑っている私が…彼の声がする受話器を大切そうに抱えている私が…はっきりと思い出される。

 

 幸せだった!


 どんなに離れていても…


 声が聞こえて…

 声のトーンから気持ちも伝わって…

 笑い声が…

 咳払いが…


 はっきり聞こえた。


 あれから5年…

 夢の中の彼は何か喋っただろうか?声を聞いていないような気がする。


 そこら中いろいろな電波が行き交っている今!

 あの世からの声をキャッチできる電話はできないものだろうか…なんて考えてしまう。


 あぁ〜あ!声が聞きたい!

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