あっちゃんの夕日が沈んでいく!
木漏れ日がすごく気持ちいい。
目を閉じて、車のシートを少しだけ倒して、好きな音楽でも聴いていたら、深い眠りに入ってしまいそう。
・・・・そんな午後
私は、あの海にやって来た。
砂浜の波打ち際を散歩する夫婦がいた。太陽とは反対側の東の方角に向かって2人肩を並べて歩いている。
たまに、顔を見合わせ・・・・微笑んでいるようにも見える。
2人の背中を太陽が照らしている。
2人の間を、今日は暖かい風が通り抜ける。
同じ方向を見て
ゆっくりゆっくり・・・
相手の歩くスピードに合わせて・・
私も、
そんな生き方をすればよかった。
23日間の入院生活。
あっちゃんと朝から晩まで一緒にいれたのは、残酷にも病院だった。
毎日毎日が、辛くて、「死の宣告」も受けていたし、あっちゃんの症状に希望の光が全く見えないものだから、私自身の心も体も壊れてしまいそうな・・・そんな日々だった。
でも、そんな日々であっても・・ あっちゃんが居たから。
私の目の前に居てくれたから・・。
肝性脳症の症状が表れて、ほとんど眠ったような状態になった時でも音楽を聞かせた。すると、反応した。一緒に口ずさんだ。そして時々、「おれは、元気だぞ!ここにいるんだぞ!」と、言わんばかりに、大きな声を出して主張していた。
私達を悲しませないように・・・。
朝から晩まで・・・
横にいて、ずっと顔を見ていた。
横にいて、ずっと手を握っていた。
横にいて、同じリズムで息をしていた。
横にいて、「必ず退院できる。」と、同じ夢を見て奇跡を信じていた。
これまで、2人で、競争するかのように走って生きて来たから。
もっとゆっくり歩めばよかった。
日が沈もうとする頃、70代?の夫婦が散歩にやって来た。
本当はこれからだよね。
お互いに60歳を過ぎた頃・・一緒に、肩を並べて、競争せず、相手に合わせて歩くんだよね。
10年先・・・
きっと!この海の一番綺麗な波打ち際を、あっちゃんと2人で歩いていたはず・・・・
それなのに・・・
あっちゃん!
どうしようもない!
フライングだよ。

