哀しい鐘の音
こたつをそろそろ出そうかな。と、思ったけれど・・・
今年は止めることにした。
こたつに一人が入っても・・淋しい感じがする。
テーブルの真ん中に置かれたみかんを取り合うわけでもないし・・・
足があたったから・・と、言って
「今!誰の足!」って、蹴りあったり、言い合ったりするでもなし・・
こたつに潜って、オレンジ色に見える互いの顔を見て笑い合うわけでもない。
寒くなって、一人で入る「こたつ」なんか・・・要らない!
明日から11月。
月めくりのカレンダーも残り1枚になる。
12月・・・が来てしまう。
世界中が、一番綺麗で・・賑わう月
だけど、私にとっては、
緊急入院から・・
24時間の死の宣告・・・
12月は・・要らない!
そして、お正月も・・・
要らない!
ソファに座った。いつも・・・の場所に。左からは西陽が差し込み、少し眩しい。目線を上にして、北向きの窓から空を見てみる。
約束がある訳でもない。自由な時間。何もかもが止まった様に感じる。
ただ、窓から見える雲の形だけが変わっいく。時間は確かに動いているのだ。
私だけが、取り残されたような気持ちになる。
あまりにも静かだったので・・・
夕方5時を知らせるための鐘の音が聞こえてきた。
「へぇ。この町でも、5時に鐘を撞いていたんだ。」
もう、20年以上ここに住んでいるのに聞いたことがなかった。
聞こえなかったのだろう。
忙しく過ごして来たから。
そして、家の中は、
あっちゃんがドタバタ、店に行く準備をしたり、
鍋がグツグツ煮えていたり、
テレビの音・・・に、
あっちゃんの声・・
そんな「幸せの音」にかき消されて、今まで聞いたことがなかったような気がする。
でも、
こんなに静かだったら聞こえるだ。
・・・ 哀しみや
西陽に響く
鐘の音・・・
また、違う形の雲が、窓枠の中に入っきた。
ずーっと続いていくんだ。
私のこの気持ちも・・・
ずーっと続いていくんだ。

