私の名前をした船
突然!船の免許が取りたいと言った。
その年の夏…船を買った。
船には私の名前をつけた。
あっちゃんは、休みの度に船に乗った。
船釣り。
そして、誰にも邪魔されず海原の中を滑ることを楽しんだ。
海…
見渡すかぎりの水面…太陽の陽を反射してそれはそれは眩しい・・・
風を切り進む爽快さ・・
エンジン音と波の音だけ…
それが…心地よい。
言葉なんていらなかった。
あっちゃんと娘と私…それだけでよかった。
目と目が合って微笑む…それでよかった…。
日に焼けたあっちゃんは、かっこよかった。そうそう…その時も、いつも右手には、缶ビールがあった。
夏休みには、娘の友達四、五人連れて無人島へ海水浴…へも行った。
キャプテンのいなくなった船。
今でも港に繋留してある。
コンビニを始めてから、大好きだった船に乗ることも…魚釣りに行くことも…なくなっていた。
私の名前の船は、
もう動くことはない。
動けない。
あっちゃん…
幸せだったよね。
あっちゃんとただ…
ただ海だけを二人でもう一度眺めたかったなぁ。
