トゥルースリーパー
あっちゃんが使っていたトゥルースリーパーのマットレスと枕…
押入れに無造作に詰め込んだままになっていた。
毎日…睡眠不足だったのだろう。
毎日…コンビニのこと、それに関わる経費のこと、借金のこと…悩みも尽きることがなかった訳だから。
その悩みから少しでも解放されたくて…買ったのだろう。
ある日、布団に敷いてある見慣れない物に気づいた。
私達二人は、財布が別々だったので、お互いの貯金、財政事情・・全く知らなかった。ましてや、いちいち…それぞれが購入する物なんて気にもしなかった。
気づけば・・新しいコートを着ていたり、靴を履いていたりなんてことは、日常茶飯事だったから。突然、大型テレビがやって来たこともあった。だから・・・
報告もなければ、報告もしない。
コンビニを始めてからそうなった。それまでは、我が家の大蔵大臣は私だった。何を買うにも私の許可が必要だった。ビール一本…私の許可が要った。
私が大蔵大臣だった頃は、晩酌には、お酒とつまみが毎日あった。堂々と美味しいお酒が飲めていたので、トゥルースリーパーなんて物は・・・必要なかった。直ぐに眠りに就いていた。
ぐっすりと…
トゥルースリーパー…に、頼るようになった頃から…何もかもが・・崩れ始めていったのかもしれない。
このトゥルースリーパーで熟睡できた日は、どのくらいあったのだろうか。 深い、心地良い睡眠ができた日があったのだろうか。
トゥルースリーパーは、ズシッと重かった。
あっちゃんの汗や涙…悩みや苦労の重さだろうと思った。
そっと…
それに、身体を埋めてみた。
しっとりまとわりつくような感覚がした。
枕に顔を埋めた。
あっちゃんの匂いがした。
一年経ったのに…まだ・・
今日から…使ってみようと思った。
あっちゃんの汗も涙も…受け止めてくれたから…
きっと…この哀しみも和らげてくれるかもしれない。
枕カバーは、あっちゃんのシャツで作った。
明日という日が優しく迎えられますように…
