国道1号線
大きなベランダ側の窓を開けると、目の前を国道2号線が走っている。
途切れる事なく行き交う車…何処から来て、何処へ向かうのだろう。
約10年前にあっちゃんが「国道1号線の起点」を見に行こうと誘った。
何故…国道1号線の「始め」を見たいのだろう…その時はそう思った。
国道2号線は、私の生活道路。しかも2号線の「終点」は、よく知っていた。何故なら、2号線に続く国道3号線は、あっちゃんと私が大学時代を過ごし…生活し…遊んでいた…そんな思い出の道路だった。
1号線が見たい…と言った頃、我が家の生活状況も変わろうとしていた。娘が進学のために故郷を離れた。
あっちゃんと私は、2回目の「2人だけの生活」が始まったばかりでもあった。
生きている以上…幾つもの「始まり」と 「終わり」を経験する。それは…時には自ら望んだ変化であったり…なかったり…もする。
その「終わり」方は分からない。
だから、せめて「始まり」ぐらいは、自分の意思で、目標を持ち、納得した場所から…スタートしたいものだ。
「始まり」はいつも輝かしいものでなければならないと思う。
あっちゃんは、きっと…
娘のいない寂しさもあっただろう。都会で学ぶ娘への期待もあっただろう。そして心配もあったであろう。
だから、きっと…
娘のスタート地点が見たかったのだ。愛する娘の人生のスタートを見ておきたかったのだろう。
東京の日本橋…で見つけた。
国道1号線の「起点」
ここからスタートか。
1号線の…
そして娘の…
国道1号線の「 終点」は、あっちゃんが大好きな大阪。そして、2人が青春時代を楽しんだ九州へと続く。
今…目の前の2号線を
車が止めどなく行き交っている。
私のスタート地点は、まだ見えない。納得できる私の「始まり」の場所を見つけなければならないと思う。
「終わり」は…
あっちゃんのいる場所…と
決まっているのだから。
