風の電話
自分を許すことができたら…
生きてゆけるかもしれない…
今よりは・・・少し気持ちが楽になるかもしれない…
「風の電話」のことを知った。
白い電話ボックスの中にある一台の黒電話は、受話器を握る人の…大切な人だけに・・・繋がる。
それは、岩手県大槌町の海を見下ろす丘にある。震災で会えなくなってしまった家族や友人ともう一度「話をしたい」「想いを伝えたい」と願う人達がここを訪ね、線の繋がっていない受話器を通して、「会話」をすることができる場所…。
私も行きたい…と思った。
自分の本心と向かい合える場所。
腹の底から…泣いてもいい場所なのだろう。
その「風の電話」で、あっちゃんとも「会話」ができないだろうか。
話してみたい・・・。
『あっちゃん…
どうして死んだの?
こんなにも…早く別れなければならな かったの?
大変だったよ。この1年・・・』
涙…涙で「会話」にならないかもしれない…
『今はのんびりできていますか?
あっちゃん…。
いろんな事…沢山…貴方の胸だけにしまい…黙ったまま…一人で逝かせてしまったことを、ずっとずっと悔やんでいます。
申し訳なくて。
私自身に腹が立って。
それが、苦しくて…苦しくてたまらない。
死んでしまいたい…と、何度も思ったよ…。今も…・・・。
だけど、誰よりも…私が、「遺された者の気持ち」…大切な人の死の「息ができない程の哀しい苦しみ」を知っているから・・。
もう少し…生きてみる。
貴方が一番愛している
娘のために…
だから…生きるために…
私を許して欲しい。』
と・・・懺悔し…懇願しよう。
「風の電話」…
「風の声」…になって、
この家の窓を叩き、私の耳元で…そっと囁いてはくれないだろうか。
『おぅ・・きっと、うまくいく。
ゴン…幸せだったぞっ』って…
風に紛れて・・・
貴方の声が聞こえたら…
次の一歩が…
踏み出せそうな気がする。
「許して…」
