あっちゃんと蝉
もう…蝉が鳴くんだ。
7時を過ぎ、辺りもしらじらとし始めた頃、蝉が一斉に鳴き始めた。まだ、梅雨も明けていないのに…と思いながら窓を閉め、エアコンのスイッチを押した。そして、蝉の声が聞こえる方に耳を傾け…、 私はあっちゃんを思い出していた。
「食べたい物がある。」と、あっちゃんに電話をすると、
「メールを送れ」と、言って直ぐに切られた。
だから私も、
「柿ピー、ガーナチョコ、おかき」と…だけ送った。
あっちゃんはいつもコンビニの袋に3つのお菓子を入れて、私の枕元に置いてくれた。
そんな或る日…
その日は仕事から帰ると、あっちゃんが丁度、仕事に行く支度をしている時だった。
「行ってくるぞ。」と…言ったかと思うと、玄関を出る時、
「ポットの横にあるおかき入れのおかき、食べてええぞ。」と叫んだ。
(きっと…ニヤニヤ笑っていたのだ ろうなー。)
「ありがとう。いってらっしゃい」って…私も叫んだ。
山積みにされているおかきを遠目にチラッと見た。丸いおかきだった。私は塩味が好きだ。しかし醤油味のような色をしていた。
「まあ…いいや。」
しばらくして、
一つ…手に取ろうと近づいた時…
唖然!
「あっー!」
「あっ。やら…れた!」
蝉の脱け殻の山… 山…
「気持ち悪い……」
サランラップに包まれた
蝉の脱け殻…
思わず…笑った…。
あっちゃんは、
お茶目なイタズラも…
オシャレなイタズラも…
サプライズも…
さらりとやってのける人だった。
一緒にいて本当に楽しかった。
そんな人のこと…
諦められますか?
