変貌するあっちゃんが怖かった。
帰省していた娘を見送ろうと最寄りの駅まで行った。
必ずプラットホームまで行き、新幹線が見えなくなるまで見送る。これは、我が家の決まりだった。
娘は、新幹線の中。
あっちゃんと私はホームで。
そこで、あっちゃんと私のパフォーマンスが始まる。チューチュートゥレインを踊ってみたり、車中にいる娘とジェスチャーで話をしてみたり、ホームで2人で相撲始めたり…
娘が窓越しで笑っていた。
あっちゃんも…笑ってた。
最後は、新幹線との競争。
一緒に走る。見えなくなるまで手を振る…。あっちゃんと2人でやってきた。ずっと…2人で・・・
でも…、その日
あっちゃんは、
「車で待っとく。」と言った。
娘と駐車場から駅に向かう途中、財布を忘れたことに気づき、慌てて車へ戻った。車の中にあっちゃんはいない。(おかしい!)車が開かない。
キョロキョロしていると、コンビニが目に入った。走って行った。あっちゃんがいた。お酒を握りしめレジに立っていた。支払いをする直前だった。
私を見て驚いた顔をしていた。
私は、そのお酒を奪い取り、
「買いません」と言って、レジカウンターに置き、あっちゃんを引っ張って店を出た。
その日から…何かが変わった。
いや…以前から何度かあった。
でも、この日は本当に何かを感じた。
娘の結婚式が終わって間もなくのことだった。
車の中はあっちゃんと2人…
どちらとも何も話さない。
私は暗い車の中で、もう…一緒にいられないと思った。離婚しようかとも考えた。
決して…嫌いになった訳じゃない。やっばり好きだ。でも…もう、
見たくなかった。
変わりゆく姿(容姿)が…だんだん怖くなっていた。恐怖を感じていた。
その日から…一ヶ月後、あっちゃんは、吐血し緊急入院をすることになる。
永遠の別れをしたかった訳じゃなかったのに・・・
ただ…いつまでも、あっちゃんは私の自慢の夫でいて欲しかった。
『見たくない』なんて
思ったばかりに…
