聞けなかった…悲鳴
赤ちゃん用の小さな布団と大人用の布団が並んで敷いてある。
あっちゃんの遺影が置いてある部屋に…いつも並べて敷く・・
娘となっちゃんの可愛い布団。
きっと嬉しそうに眺めているだろうなぁ。愛する2人の寝顔を…。
あっちゃんはコンビニ、私は自分の仕事に専念するようになってから…私が眠っている時にあっちゃんは帰宅し、あっちゃんが眠っいる時に私は出勤する。そんなすれ違い生活を送っていた。
いつしか…どちらからともなく、物音をたてないように「静かに」生活していた。
「起こさないように…」
それが互いを思いやる優しさだとも思っていた。
私はいつも、
部屋から聞こえくる寝息(いびき)に…向かって小さく囁いた。
「行って来ます。」って…。
あっちゃんの部屋のドアを音がしないようにゆっくり開けて、あっちゃんの疲れ切った寝顔に…
「行って来ます。」と言った。
それが・・優しさだと勘違いしていた。
物音をたてないように過ごすことが・・「静かに」過ごすことで…
いつのまにか自分一人のテリトリーを築き、私たちは一緒にいながらも… それぞれ別々の生活を送るようになっていた…。
寝顔をもっとよく見ればよかった。背中でも…足でも、摩りながら話せばよかった。眠くても…起きて夜食の準備すればよかった・・・。
そうすればあっちゃんの悲鳴が聞こえただろう。
布団を並べて一緒に寝ればよかった…
「うるさいのぅ」
物音こそが、
「生きている」証だった。
