延命治療は誰のためにするのか。
ソファで寝そべった視線の先に、台所の換気扇が見える。
そこで…上を向いて煙草の煙を吹かしていた。
お酒に煙草…両方とも大好きだった。
「どっちか止めたら?」
「酒は止められるけど…煙草は、無理じゃのぅ。」
入院すると必ず個室。
そのバスルームで煙草を吸っていた。吸い終わると、消臭スプレーを振りまく。臭いを消すために…。誰になんと言われようが、医師に注意されようが、止められなかった煙草。
緊急入院した12月29日。
その日を境にあっちゃんは、禁煙。勿論禁酒。煙草のことを忘れているようだった。隠れて吸おうともしなかった。お酒のことも…
もう…本来のあっちゃんではなかったのかもしれない。
あの…12月29日からは・・・。
昏睡状態…目覚め・・・この繰り返し・・・。
そんな状態でも生きているだけでよかった。
しかし、24時間の命と宣告を受けたあの日…私達家族は、あっちゃんに内緒で延命治療を断った。
医師の話を聞いた上で出した結論だが・・それが正しかったのかどうかは分からない。
もう…おしっこも出なくなっていた。身体中…膨らんで可哀想だった。
でも…もしかしたら・・・延命治療を受けていたら後一ヶ月でも…一週間でも、少しでも生きられたのかもしれない…
肝臓移植という手段は考えられなかったのか…
幾度も幾度も後悔した。
無念だっただろう。あっちゃん。
だから…1日も早くあっちゃんに逢いに逝きたい。
煙草とお酒を持って…。今日は、やけに心が沈む・・・
