仮面
「我が家の正月はねー。」
また、耳を塞ぎたくなる会話を暫く辛抱して聞かなければならない。
かつては私もそうだったのだろう。幸せの中にあっては…人のことなど考えられない。
人の苦しみや悲しみなど見えないものだ。
皆んなが…みんな「幸せ」だと勘違いしている。誰もが「正月は楽しい」ものだと思って疑わない。
おまけに、どこかへ初詣したのか、嬉しそうに二人で手を繋いだ写真まで持って来て…見せてくる。
笑って見ているけれど…
腹の底から沸いてくる感情を押し殺し…その場の雰囲気を一言にして変えてしまいそうな言葉を呑み込み…耐えている。
そんな時…
惨めったらしいな…私・・
って・・自己嫌悪。
しかし…あっちゃんの死と共に芽生えた…私の中で隠れていた「負の感情」は、何かをきっかけに大きく膨らんでしまうのだ。
この上ない哀しみを味わい…
見なくていいものを見てしまい…
感じなくてもいい感情を背負ってしまうと・・・
人は、変わってしまうのだろう。
気づかなかった。
世の中には、沢山の目を伏せたくなる…口を閉ざしたくなる現実があることに…。
「哀しみ」を胸に抱いてみて初めて気付いた。
そして…知った。
人は…人の心をけして理解できることがないと…いうことを。
