初めての出会い
夏に行きたくても行けなかった思い出の海へやって来た。
海へ着くなり、私の目に飛び込んできたのは、静かに輝いている夏の終わりの海ではなく、緑と黄色の葉をつけた沢山の桜の木々だった。
その、緑色と黄色のコントラストがとても鮮やかで初々しく見えた。
美しい桃色の桜の季節から、青々とした新緑の季節を経て・・・・・深緑へと・・・・そして今また、新たな季節へと移り過ごそうとしていた。
そうだった。
あっちゃんが20才で私が19才の時だった。
友達の真由美が、
「今日、お見合い・・・」って。
嬉しそうに言って来た。
「そぅ!」
私は関心なさげにそう答えた。
夕方、真由美自身が自分のアパートで、お見合い相手に手料理をご馳走すると聞いた。
真由美は、久美子と言う友達と2人でアパートを借りていた。(私も女友達と2人でアパートに住んでいた)
私は、何を思ったのか・・・その日の夕方、真由美のアパートに行った。ちょっといたずらしてやろうと思ったのだ。
宴も酣の頃を狙って・・・私は勢いよく、しかも思い切り強く、 真由美の部屋のドアをバーンと開けた。
そして、大きな声で、自分の名前を名乗った。それから、
「よろしくお願いします。」・・と会釈をして、
・・・・・・ドアを閉めた。
30秒ぐらいかな!
たった30秒間の出来事だった。
真由美とお見合い相手は二人並んで座っていた。二人のキョトンとした顔を今でもはっきり覚えている。
なんて失礼な・・・
私なんでしょう!
でもそれが、あっちゃんとの初めての出会いだった。
赤色のカーディガンがよく似合ってた。
でも・・・・
少しずつ魔の手は近づき・・・・
入退院を繰り返すようになった頃には、(私はこの時まだ、肝硬変になっている事を知らなかった)あっちゃんの容姿は徐々に変わっていった。
まず、すごく太った。体が浮腫んでいるようだった。
次に、顔色が黒っぽくなっていった。(後々黄疸がひどくなり黄色くも感じられた。)
そして、顔や体に吹出物が沢山出来るようになった。
笑顔が少なくなっていった。
「肝硬変」という病気は、体の機能だけでなく、容姿全体を、顔の表情さえも変えてしまった。
また、泣きたくなった・・・
19才・・
真由美の部屋のドアをさっと閉めた私の頬は、きっとほんのりピンク色になっていただろう。
会いたい・・・・

