運命共同体
私の全部だった。
あっちゃんは、私の・・・
優しい夫だった。そして、頼りになる父でもあった。面白くてユーモアたっぷりの兄でもあり、かっこいい恋人。趣味が同じで一緒に遊べる友達だった。
今思えば、実家から遠く離れた所に嫁いで来た私が唯一心を許したのは、あっちゃんだけだったかもしれない。
あっちゃんは、いつも私の言葉を聞き入れてくれた。
私の考えが正しかろうが、間違っていようが、それを問いただすことなく、いつも受け止めてくれた。
そして・・・
夫になってくれたり、友達になってくれたり・・・
だから・・・今でも・・・
『もういない』って分かっいるのに毎日この家の中で、彼を捜している。
どんなに捜しても、姿が見えないから、彼が使っていた物を眺めて見たり、着ていた洋服を抱きしめてみたり、もしかしたら、手紙があるんじゃないかと捜してみたり・・
そんな時見つけた古い携帯!
私に当てた、あっちゃんからのメール。
きっと・・・2、3年前のものだろうか?
「ジュゴン」とは、彼が付けた私のあだ名。誰よりもよく食べ、体も大きく、「食べては寝、食べては寝」のイメージがあったのだろう。かれこれ、10年ぐらいそう呼ばれていた。
そう、そう!
「ゴン!」・・・
「ゴン」って呼んでいた。(「ジュゴン」の短縮バージョンかな。)
最初は、嫌だった!
ジュゴンなんて・・・・
「海の貴婦人」とか「人魚の伝説のモデルだった」とか言われているけれど、どう見ても「可愛い」とは思えない。だから、始めは嫌だった。
でも、そのうち
「ゴン!」と呼ばれると、
「なに?」って返すようになっていた。
あっちゃん!
運命共同体なら、もっともっと・・
「ゴン!」って・・呼んでよ!
「ゴン!」って・・・
その声が・・・聞きたいよ!

