ダイヤはダイヤ
「それからどうしたの?」
こんなにも人と話したかったんだ。
あっちゃんのことを・・・・。
私は、職場では、プライベートなことはあまり話さない。あっちゃんが死んでしまってからは、全くと言っていいほど話さなくなった。
口を開けば・・・
「本当のこと」を話せば・・・
涙で話にならなくなりそうだし、話したところで私の心情を理解できるはずもないだろうし。
ならば・・・当たり障りない日常的な会話と仕事の話だけを・・と。
「今日、主人がねぇ〜、」と、言ってこようもんなら、スーッと姿を消した。
なんとも薄っぺらな人間関係だ。
でも、付き合いが長い仲間や私の現状をよく知っている人は、
「少しは元気になった?」
「ちゃんと食べてる?」って、私のことを気遣って話しかけてくれる。
「元気になれるか!!」って、心・・で言って・・
「ありがとう。なかなかねぇ。」と、返す。
話したところで・・
と、思うから。
木曜日弁護士に会う日だった。
ひと通りの報告を受けた後、おもむろに、
「どんな人だったのですか?ご主人は?」から始まった。
「大学時代に知りあったの?」
「はい。就職後3、4年の 遠距離恋愛を経て結婚しました。」
いつのまにか、携帯の中にある写真まで取り出して、出会いからコンビニを始める経緯、そしてお酒のこと、私を今一番悩ましている罪悪感まで・・
話したくて仕方なかったんだ。
トントン・・
ドアをノックする音
「 相談者の方が来られています。」と、事務員さんが入り口で言った。
でも、止まらなかった。
まだ話したかった。
一人暮らしのこと
義父母との確執
家のこと
そして、あっちゃんのこと・・
優しい眼差しで、私の目を見てうなずき・・・
「分かるような気がする」
と、優しく言ってくれた。
そう!!
誰にも分かるはずなどない。
絶対に。
でも想像することはできる。
だから、
「分かるような気がする」・・は、
適切な本当の思いだろう。
「ダイヤはダイヤでしか磨けない。」
「 人もまた、人の中でしか磨かれない。」
もしかしたら、いつか、いつか私も
人によって「変われる」かもしれない・・・と思った。この「絶望の淵」から、光の差す方へ進めることができるかもしれない・・・と。
とても穏やかな気持ちなって法律事務所を後にした。

