「歩く」ことはもう・・一生しない。
静かな部屋の中
世界中に私一人なのではないかと錯覚する。
窓を開けると涼しい風とともに、虫たちの鳴き声が聞こえてくる。何時になっても・・・
よかった!
地球は・・町は、生きているんだ。
スズムシでしょうか。
コオロギ?
クツワムシのようにも聞こえる。
とても淋しげで・・・・
秋が来た事を喜び合っているようには聞こえない。
「楽しい音楽会」のようには聞こえない。
悲しく聞こえるのは、私の心のせいでしょうか。
コウロギは、約一年生きるという。
でも、スズムシの寿命は4カ月だそうだ。6月4日(虫の日)に生まれて、たった4カ月しか生きない。だからなのか、秋に鳴く虫の中で一番スズムシの声が優しく儚く聞こえる。
虫の音を今、目を閉じて聞いてみる。
悲しくなるのはどうしてだろう。
涙が出るのはどうしてだろう。
去年の今頃・・・・
娘の挙式のために2人で本当にダイエットを決意した。(毎年お正月に、春に・・・節目節目にダイエット宣言をする。永遠のテーマだった。実行することが出来ないテーマだった。それでも宣告することで安心した。だから、雑煮も御節も沢山食べていた。)
でも、11月は(去年)娘の、
たった一人娘の晴れ舞台だから・・
2人共真剣だった。いつになく!
1月・・・
1年の計は元旦にあり・・だから
「あっちゃん!明日から歩こうや!」
「いやいや!寒いから少し暖かくなってからにしよう。」
3月・・・私の仕事が忙しくなる。この時期、コンビニのスタッフの入れ替え(入学や就職などでスタッフが辞めてしまう)などもあり、春は、忙しさに感けて・・
7月・・・
「そろそろ歩こう!」
「いやいや!暑いから涼しくなってからにしよう。」
そして、9月・・・
「歩こうや!」
しぶしぶ・・・
「おう」
あの時も虫は鳴いていたのだろうか。不思議なことに、全く虫の声を聞いていないように思う。
2人で一時間ぐらい歩いた。
たわいもないこと話しながら・・・
あっちゃんは、ゆっくりゆっくり
「おそい!速く!」
きっと、その頃から体がしんどかったのだろう。(気づいてあげれなくてごめんね。)
結局、三日坊主ならず、2日で「歩く」ことを止めた。
今思えば、その頃あっちゃんは、少し痩せてきていた。後で知ったことだか、夏から大好きなお酒を止めていたそうだ。だからか顔色も少し良くなっていた。
娘のためだったら、お酒を止めることもできるのだ。
あっちゃんは、娘の挙式に人生を懸けていたから。以前話したように、「娘の挙式」が、自分の人生の最高潮だから。その後のことは・・・私がいるのに・・・どうでもよかった。
まだ、鳴いている。
私も一緒に泣こうかな。
虫の声が悲しいのは
「一緒に歩く人」が
いないからかもしれない。


