取り返しのつかない大失敗
私は、あっちゃんが美味しそうにお酒を飲む姿を見るのがとても好きだった。
だから、晩御飯には必ずお酒のおつまみを一品か二品添えた。
まずは、ビールから始まって、日本酒か焼酎を飲んだ。
美味しそうに飲んだ。
飲んでも表情は全く変わらなかった。普段から陽気な人だけど、飲むと益々明るくなって・・
冗談言ったり・・・
ふざけてみたり・・
いい・・お酒だった。
一緒にいて楽しくなるお酒だった。
「ただいまー。」
仕事から帰って、お風呂場へ直行。
お風呂場からは、時々鼻歌が聞こえてきた。
一日の楽しみ!
毎日を生きるための活力源だったのだろう。
しかし・・・
そんな・・極普通の晩御飯時のささやかな安らぎを感じる団欒が、いとも簡単に壊れてしまう時が来る。
コンビニ経営だ。
不規則な勤務時間。三度の食事の時刻を固定することも困難になった。(上手く経営されている店舗はもちろんあります。)
娘が大学進学で家を離れると、二人で向かい合って食事をすることも少なくなった。
あの鼻歌も、夜中に帰って来て入る風呂場じゃ歌えない。
全てが崩れていくように、あっちゃんの身体も壊れていった。
働いても働いても・・
私達が受け取れる金額は、決まっていた。(受取額が減る事もしばしばあった。)
体も心も・・・・全部、
みるみる・・・壊れていった。
いつしか、あっちゃんは、陽気なお酒が飲めなくなっていった。
夜中に、眠るために、疲れた体を休めるためだけに・・水のように飲むようになっていたのだろう。
膨れる身体・・
大きなお腹・・・
ざらざらになっていく肌・・
肩から胸にかけて肌の色の変色
顔まで黄疸が出始めて・・・
目の玉まで・・・
肝臓の数値が悪くなると入院した。5、6回入院しただろうか。
入院した時から、
私との間では「禁酒」の約束はずっと続いていた。
・・・にも、関わらず、
あっちゃんが帰って来るのは、大体深夜。私が眠りについた頃、家に帰り着き一人で寂しく飲んでいたのだろう。
隠れるように・・・
見つからないように・・
「一日ビール一本と焼酎一杯ね。
月曜日と木曜日は、休肝日ね。」
もっと厳しく管理すればよかった。
徹底的にやめさせればよかった。
お酒にしても・・・
コンビニ経営にしても・・・
あの可愛い笑顔に負けちゃった!

