施設の夏祭りがあった。
真っ暗な空に…綺麗な大輪の花火が上がり・・散った。
花火…
空に打ち上がる花火…
あっちゃんが死んだ年の夏…
花火が格別好きな訳ではないが、近辺で開催される花火大会を探して娘と二人で見に行った。
花火が打ち上がる毎に…
あっちゃんに届け!!っとばかりに見上げた。
空いっぱいが、あっちゃんの顔のように見えたから。
そして、感じた…。
大輪が開く前の…
真っ暗な空が彩られる前の…
「ドン!」と鳴り響くその音が・・
空から送られてくる…その振動が…私の心臓に響き、見えない空との「繋がり」のように…
感じた…。
花火を見ながら自然に涙がこぼれた。
あっちゃんがいない初めての夏だった。
しかし…
夏が過ぎ、冬が来て…
そしてまた花火の季節になる頃には…
1年の間に・・・
私の心の中から、いろいろなものが一つずつ消えて失くなっていた。花火のように…。
私の心には花火は、似合わなくなっていた。
祭りには行かない。
花火も見ない。
次の年も…
その次の年も…そうした。
今年…間近で花火を見た。
皆んな…見上げていた。
皆んな…微笑んでいた。
私も利用者の肩に手をやり、「綺麗ね!」と…見ていた。
あっちゃんに届け!ではなく…
私への贈り物のように感じた。