お盆の明暗
私が初めてお化粧をしたのは、小学校高学年のお盆だった。
私の田舎のお盆は、それはそれは賑やかだった。人口が少ないせいもあるのだろう。
1年に一度の大きな行事は、老若男女…こぞって櫓の周りに集まった。
帰省した人達も皆…集まった。
私も毎年、母に浴衣を着せてもらった。そして、その足で近所に住む叔母の家に行き、従姉妹の加代姉ちゃんにお化粧をしてもらった。
加代姉ちゃんは、地元の農協に勤める私より15歳年上の美人で自慢のお姉ちゃんだった。
加代姉ちゃんも歳の離れた私達三姉妹をとても可愛がってくれた。
田舎のお盆は、浴衣を着たり、化粧したり、夜遅くまで踊ったり…少し背伸びして、大人の世界を味わえる不思議で刺激的な一面を持っていた。
そんなお盆を…過ごしていた。
しかし
嫁いでから…浴衣なんて1度も着たことがなかった。
和ダンスの中には、母が嫁入り道具の一つとして持たせくれた、淡い水色の絞りの様な浴衣が、もう…30年近く眠っている。
コンビニを始めるまでは、お盆の時期は必ず、3人で「里帰り」をしていたからだ。だから、嫁ぎ先の地域の盆踊りには参加したことがなかった。
それが去年初めて盆踊り会場に行く事になったのだ。各自治会毎に2015年に亡くなった人たちの供養の式が行われるので・・・(あまり気は進まなかったが…)
「お盆」だし、
「供養」すべきだと思い、
義父母と娘と一緒に出向いた。
白木の板にあっちゃんの名前があった。
つい…名前が書かれてある人達の享年を見た。
およそ30名の名前があった。その中で、あっちゃんは、2番目に若かった。何故か…それが哀しかった。
今年のお盆も終わった…。
私は…多分…この地域の盆踊りに参加することは、もうないだろう。
去年が最初で最後…だった。
