人生半分
多分転職を決意し、仕事を辞めた年の初夏だったと思う。
あっちゃんがカラオケボックスに連れて行ってくれた。
自称郷ひろみの「あっちゃん」に、
松田聖子の「私」
それから、スピードHiro「娘」
歌って・・・踊って・・・大騒ぎ!
そろそろ歌も終わりに近づいた頃、あっちゃんがマイクを持って言った。
「仕事を辞めてすまない。
『長い人生の中の・・ほんのひと休み』と言って、受け入れてくれた事に感謝してる」・・・・って。
そして、用意していたかのように、湯原昌幸の「人生半分」という曲を歌った。
熱唱していた。
唄いながら
泣いているように見えた。
初めて聴く曲だった。
彼を見て、
私も泣いた。
「人生半分」・・・・
あっちゃんと一緒に過ごした23日間の闘病生活。肝性脳症と言う症状が起こり悩まされた。
肝性脳症には、5段階の症状があった。
①睡眠リズムの逆転・周囲に対する無関心
②周囲を正しく認識する力や計算、書くことが難しくなり、不規則な震えが起こることがある。
③ほとんど眠った状態。しかし、外的刺激に対しては反応する。
④完全に意識を消失する。痛みに対しては反応する。
⑤すべての刺激に対して反応しなくなる。
④⑤段階の症状までいくと、あっちゃんの動かない手を握り、胸に手を当て赤ちゃんを寝かしつけるようにリズムを取り・・・・・・・・何度も聞かせた。
「歌って・・・」
「早く、目を開けて・・・」
目覚めることだけを信じて。
アミノレバンが効いてくると③の段階に入り、目は閉じたままだけど曲に合わせて頭を動かす。そして、歌う。(歌にはならなかったけど、歌ってた。)
「人生半分」と大好きな「矢沢永吉の歌」を・・・・・
息を引き取るその時まで
病室で流した。
硬く閉ざした瞼
でも、しっかり聴こえていた。
人生半分・・・・
これから二人で残りの半分を・・
生きるはずだった・・・
一人では・・・・
あと半分も生きられない。
私の部屋では、今も流れている。
「人生半分」
「長い、長ーい人生の
ほんのひと休み
ゆっくりしいや!」

