おかえり!
お盆は、先祖や亡くなった人が浄土(あの世)から戻ってくる期間と言われている。
たった四日間?
「それでは全く足りません。」
あっちゃんに会えなくなってから、もうすぐ七ヶ月になる。
私にとっては、お盆だの、正月だの、祭だの・・・そんなこと、もうどうでもいい。
「お盆だから会える。」なんて!
私は、いつでも、毎日、 今・・・・・会いたい。
毎日、声が聞きたい。
毎日、笑顔が見たい。
この半年、どんなに叫んでみても、大声で名前を連呼しても、何も返って来なかった。
何百・・何千回、彼の名前を呼んだだろう。
会いたくて・・
会いたくて・・
会いたくても会えない!
そんな日を・・・ただ、過ごして来た。
本当に、本当に・・・・?
この四日間私たちの家に帰って来てくれるのなら・・・
私の目を見て私の名前を呼んで・・・そして、ぎゅっと抱き締めて・・・・欲しい。
いいえ! 欲張らない!
ただ、優しく微笑んで、見つめてくれるだけでいい。
今、私のそばにいるのなら・・・・
優しく微笑んで・・・
あっちゃん・・・
部屋の電気を全て消し、ロウソクをつけてみた。
「あっちゃん」と、呼びかける。
ゆっくりとロウソクの炎が揺れる。
「あっちゃん」
締め切った部屋の中で揺れる。
右に左に・・・今度は、大きく揺れる。
「あっちゃんだ!!お帰りなさい。」
「おかえり・・・遅かったね!」
見えないあっちゃんに手を差し伸べる。
もちろん、握り返してなんかくれない。
姿も見えない。
遺影を胸にあて抱きしめてみる。
あふれる涙・・
愛おしくて・・・愛おしくて・・・
涙が遺影に落ちる。
揺れる炎の中で、あっちゃんも泣いている様に見えた。
優しく・・・・手であっちゃんの涙を拭う。
そして、
語りかける。
『あっちゃん!楽になった?もう、どこ
も痛くない? 体、しんどくない?
こんなにもこんなにも辛い思いをさせ て、私に悪いと思うなら、もっともっと生きるべきだった。
大切な大切なたった一人の娘のことを思ったら、死ねなかったはずよ。
だけど・・・
だけど・・・
悲しいけれど・・・・
お浄土でゆっくり休んでね。
私と会えるその日まで・・
あっちゃん!
もぅ何も考えないでいいから。
安心してね。』
今日から四日間・・・・・
あっちゃんと一緒。
嬉しい!
ありがとう!
あっちゃんと二人だけで過ごそう。

