絶望の底から青い空を見て・・・

2014年12月31日
私の目を見て医師は、言った。
「24時間の命です。」
2015年1月20日最愛の夫は、死んでしまった。
死・借金・裏切り・崩壊・人間不信…
今、独り…目に見えない何かと闘いながら生きていく…。
逢いに逝けるその日まで…。

エレベーターを降りるとそこは天国だった

エレベーターに乗ろうとしたらメールが届いた。


「今!どこですか?」


エレベーターを降りると、そこは、

初めての「ビアガーデン!」というところだった。


白いテーブルに白い椅子が行儀よく並んでいた。白いテントみたいな屋根?の隙間から、黒い空が見える。吹いてくる風は、なま暖かいが不快には感じられなかった。


キョロキョロしている私を見つけたらしく同僚が小走りに迎えに来てくれた。


まずは飲み物を自分でついで席につくらしい…。そんな決まりがあるのか?

持って来てはくれないのか?


セルフサービスなんだ!


「そこのどちらかのコップで!」と、指差した先には、大きなジョッキーグラスが冷蔵庫の中に綺麗に並んでいた。アートみたいだった。


私は、まず烏龍茶を探して入れた。お酒は飲むつもりはない。できれば早く帰りたいと思っていた。車で来たし。


あっちこっちのテーブルからは、大きな声が飛び交っている。

私は、烏龍茶の入ったジョッキーを持ち…皆の居る先を目指そうと目をやった。

すると、誰もが皆、ジョッキーを持ち上げ、美味しそうに呑んでいた。誰もが皆、笑顔だった。


ふと…どこらから「生中!おかわり!」って…あっちゃんの声が聞こえてきそうな気がした。

だから、

少しの間、席に座らず辺りを見回してみた。


いるはずは…ない!

エレベーターを降りるとそこは、「天国」というところだった・・なんて…ことがあると嬉しいのになぁ。

一年に一回でいいから…と考えながらゆっくり席についた。

上司の悪口に、

ちょっとした学園の経営上の不満に会話は弾んだ。


そして、恋ばな・・まで。


もちろん!今日も

まだ!秘密…。

あっちゃんが死んだこと!

絶望の底から叫んでる!

一旗上げて!

故郷に錦を飾って…なんて・・ そんな事等…到底考えてはいないが・・

このまま…あっちゃんのところへ逝く…その日まで・・


このまま…の形で、

ただ…なるようになれと…

まるで…死んだように…


ただ今のまま、このまま


私の人生が終わるということは…不本意である。


夢中になって…何かがしたい!

あっちゃんの嘘

生まれて初めてのビアガーデン!

9月でもあるんだ。ビアガーデン!

明日は、職場の親睦会。


私は、飲み会が嫌いだ。


それは、

あっちゃんが死んでから…。

お酒を飲み交わし、喋り合う会は、適当に理由を作って参加しなくなった。


2年前の歓迎会の時は「義香さんが来なければ始まらないから…」って言われ、本当に仕方なく「じゃあ最初だけ…」と念を押して顔を出した。


明日ビアガーデン。


どんな嘘をつこうか必死に考えている。


ただ今回は、8月始め頃から新しい職場に来て仲良くして頂いている同年代の2人に、

「いい?義香さん!来月の8日は、休み希望絶対に出すんよ!絶対に!親睦会だから。一緒に参加して楽しもうね」何度も念押しされた。


休み希望は、あっさり通った。


9月8日。

どんな嘘を言おう。


義母が倒れた!

娘が風邪を引いたので孫の面倒を見なくてはいけない!

なんて…言おうかなぁ…。


そうそう!

あっちゃんがよく言っていた。

実は、まだ娘が小学生だった頃、病気をすると、仕事を休んでくれたのは、あっちゃんだった。

私は、なかなか仕事を休めなかったから…、

あっちゃんか、義父母が…休んでくれた。

あっちゃんが、


「この前、大阪の叔父を殺したから今度は誰を殺そうか…?

沢山の人を殺してしまったから、もう誰もおらん!」なんて…笑いながら

・・・

まだ生きている元気な親族の人を「死んだ」ことにして休んだ。


だから…その人達より先に死んじゃったんじゃない?


病気になったとか、倒れたとか…そんな嘘は、やっぱり!

不吉だからつきたくない!


ならば…なんて言おう!


行きたくないなぁ。


あっちゃん!

あなたは本当に面白かった!